はじめまして!
4月よりSAP建築事業部に入社しましたNavykaNです。
大学4年間・大学院2年間、計6年間、身の回りの様々なことについて思考する機会がありました。
その経験を活かして、面白おかしくSAPの事業内容や近況を報告させていただきたいと思います。
これからどうぞよろしくお願いいたします。
さて、本題に。GE上野毛が上棟しました!
GE上野毛は
・延床面積80坪(265.87㎡)
・3階建木造長屋
・10戸
の比較的大規模物件な木造収益物件です。
北側斜線等の規制によって複雑な勾配屋根となり、3階の部屋の天井は特徴的な形になりました。
3階の住戸には専有の鉄骨階段があり、その階段も無事かっこよく設置されました。
外装・内装等の具体的な設計内容は竣工した際に改めてブログで紹介させていただきます。ご期待ください!
なので本ブログでは、GE上野毛の設計コンセプトについて詳しくご紹介したいと思います。
上野毛という敷地には、大まかに以下の3つの特徴があります。
①2駅2路線利用可能
③二子玉川と自由が丘を身近に感じる暮らし
③美術と自然の融合する高級住宅街
(具体的な上野毛の地域特性については先の物件取得時に投稿させていただいた下記URLのブログをご確認ください。)
そんな特徴を持つ敷地に対し、本計画では「自転車と共に暮らす自分だけの基地」をコンセプトとした長屋を設計しました。
設計する上で、「自転車と共に暮らす」こと、さらに深堀して「自転車を乗ること」、について考察してみました。
話は少し脱線しますが、皆さんは「ギガントキプリス」という深海生物をご存じでしょうか。
出典:twitter@Mendako_Mentan
写真の通り、「大きな目玉を持つ、貝虫(深海生物)」という意味の名前です。
この生き物は、「最も集光能力のある眼を持つ生物」として、ギネス記録に認定されています。
なんと、その集光能力は人間のおよそ8倍にも及びます。
この生物の形態が示す通り、生物の体のほとんどを文字通り「眼球」が占めています。
まるで「ゲゲゲの鬼太郎」の「目玉おやじ」です。笑
出典:ピクシブ百科事典-目玉おやじ
なぜ、このように「歪」な生き物が存在できるのか、どのように、この生き物が「視る」という行為に特化しているのか。
ギガントキプリスは、ウミホタル科の深海生物で、体長は3cmほど。深海1000m付近に生息しています。
他のウミホタルやキプリス幼生と比較すると、この生物は「視る」ための器官が異常に大きく発達しています。
これはギガントキプリスが深海という暗闇の中で、餌とするプランクトンを発見するために、生存/絶滅ギリギリのバランスで、「視る」という行為にひたすら特化するトレードオフ※を行った結果です。
つまり、「視る」という生きるために必要な行為と「視るために形」が非常に近い距離にある生物なんです。
※〈トレードオフ〉とは、広く「一得一失」と訳され、主に生物学の分野では、環境や捕食者に対して、「何を失う代わりに何を得るか」という駆け引きそのものを意味します。
他にも例を紹介します。
「シオマネキ」という生物のオスは、「求愛」という行為に特化するため、片腕が大きくなっています。
出典:ブログ「海遊館日記」-ハクセンシオマネキ
写真の通り、シオマネキのオスの片腕は大きく、誇示としての役割を果たします。
この腕の振る舞いが速ければ速いほどメスに魅力をアピールできるそうです。人間もこんなに単純だったら良いのに。。
ここでも「求愛」行為と「魅せるための形」が近い距離にあります。
ここで話を人類(人間)に当てはめてみましょう。
下図の「人類と道具(住居)進化の樹形図」をご覧ください。
人類の「形態変化」がとまったとき、道具の多様性は爆発しました。
「人類と道具(住居)進化の樹形図」(出典:人類と〈強調〉)
リチャード・ドーキンスは「イエとは生物個体の体が延長された表現型効果である。」と述べています。
人類は〈身体〉変化のオルタナティブとして、外在化(外部化)した第二の身体、つまり道具を即応的に変化させます。
つまり、〈身体〉が環境に適応する歳月を待たずして、即時的に〈身体〉を自由変化させます。
わかりやすく言うと、寒い環境において、毛皮を身にまとう進化を待たずして、毛皮でコートを作って防寒をしてきた、ということです。
これは、人類の「行為への特化」は必ずしも〈身体〉には顕示せず、二次身体である〈道具〉に現れることがわかります。
「細かいものを視る」行為に特化させるために、〈身体〉の一部である「目」を大きく進化させるのではなく、「虫眼鏡」という〈道具〉を外在化させました。
「水を吸い込む」行為を特化させるために、〈身体〉の一部である「口」を細長く進化させるのではなく、「ストロー」という〈道具〉を外在化させました。
ここでやっと話が自転車に戻ってきました。
「前進する」行為を特化させるために、〈身体〉の一部である「脚」を進化させるのではなく、「自転車」という〈道具〉を外在化させました。
「自転車を乗ること」はペダルを回すための大腿四頭筋、大殿筋のエネルギーを「推進力」に変換することで、その装置として「自転車」は存在しています。
今では見慣れてしまいましたが、自転車は「前進」に特化した形をしており、ギガントキプリス同様、歪な形ですよね。。
出典:人類と〈強調〉
考察が長くなってしまいましたが、何が言いたかったかというと、
「自転車は単なる乗り物ではなく、人類にとっての〈第二の身体〉である」
ということです。
人間が生まれてから、一番最初に身に着ける〈第二の身体〉が自転車といっても過言ではありません。
誰もが小さい頃にその身体の扱い方を覚え、大人になった今では手足のように自由に扱うことが出来ているはずです。
そんな〈第二の身体〉をないがしろに扱ってい良いはずがありません。
外に雨ざらしで置くのではなく、自分の身体同様、雨風をしのげる住居に入れ、メンテナンス(自分の身体で言う入浴)を毎日行うことがあるべき姿勢です。
「自転車と共に暮らす」ということは、そんな「第二の身体・自転車」と対等に、密接に関わり合いながら暮らすこと同義です。
普段の生活をする上で、自転車と共生していることを実感できる、視線の先に自転車ある、自転車のメンテナンスをしたくなる、そんな住戸を目指します。
完成予定は10月です。
written by Navy