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【竣工】阿佐ヶ谷アパートメント

category: report
2023.12.14

街を歩くとクリスマスソングをよく耳にする季節となりました。

 

クリスマスソングといえば…!という曲は、人それぞれあると思いますが…、

僕は先日ふらっと入った店で「第九」を耳にしました。

 

正式名称は「交響曲第9番ニ短調作品125」。

ベートーヴェンの代表作ですが、クリスマスから年末にかけて街でよく聴く気がします。

 

(参照:Merry X’mas show 2014 (一部追記) )

 

 

ここでベートーヴェンの名言を一つ。

 

名声を勝ちとった芸術家は、そのことによって苦しめられる。 そのため、処女作が往々にして最高作となる。

                          ー ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン ー

 

デザイナー、あるいは建築家として、あるいは…、

もし仮に、僕が名声を勝ち取ることが出来たとしたら(精神的な)最高傑作であろう、

 

処女作・阿佐ヶ谷アパートメントが竣工しました。

(あくまで精神的な。即物的には最高傑作であろうはずがないから。)

 

 

今回は、そんな阿佐ヶ谷アパートメントの竣工ブログです。

 

 

そもそもなんで、「処女作」というのでしょう。

 

「処女航海※」という言葉もあります。

船は洋の東西を問わず「乙女」の象徴です。昔の船の舳先には女神像が付いてたりするのもそれ故なはずです。

未知の世界に旅立つ体験は、不安と期待であふれているもの?としたら「処女航海」という言葉は納得です。

(※処女航海:新造された船にとっての最初の航海。)

 

じゃあ、「処女作」って、いったいどの辺が乙女で、何が初めてなのか。

 

「処女作」という言葉は、小説などの「作品」に初めて使われました。

ともすると、

 

・「作品」が女性名詞であること。

・初めて出版された作品、つまり「初めて世に出た」作品を、「処女作」と呼ぶのであれば、広い世界に初めて乗り出していく「航海」と似ていること。

 

これらを加味すると、船の「処女航海」になぞらえて、作品の「処女作」という言葉が生まれたのではないか、と思うのです。

(このブログを書きながら勝手に想像して腑に落ちました。事実とは異なる可能性は大です。)

 

(「出版」の歴史が始まったのはグーテンベルクの活版印刷(1450)からですが、大航海時代も15世紀半ばから始まっているのも関係があるのでは…? 知らんけど。)

 

 

 

 

前置きが長くなりました。

処女作・阿佐ヶ谷アパートメントの大航海の記録をお伝えします。

 

 

まず敷地は阿佐ヶ谷駅から徒歩10分の50坪。戸建て立ち並ぶ閑静な住宅街です。

(参考:【新規物件取得】杉並区阿佐谷北4丁目プロジェクト用地)

 

 

 

1階長屋5戸+2階共同住宅5戸計10戸木造賃貸アパートを設計しました。

 

設計ダイアグラムはこちらです。

ダイアグラムが表現する外観・内観それぞれのエッセンスを紹介します。

 

 

□外観

 

1. ヒューマンスケールな街並みと連続する、分棟に見えるデザイン

 

 

□内観

 

1. 駐輪場緩和を使った、容積の最大化

 

2. 1,2階ロフト・整然とした矩形の居室・豊かな天井高

 

3. 多方向からの採光・採風

 

4. 住戸それぞれの個性の最大化

 

 

 

 

これらのデザインコンセプトを基に図面と睨めっこし、足繫く現場に通った結果の竣工写真がこちらです。

 

 

□外観-1:ヒューマンスケールな街並みと連続する、分棟に見えるデザイン。

 

 

阿佐ヶ谷の戸建ての多いヒューマンスケールな街並みと連続するように、異方向へと屋根を市松に連ね、分棟に見えるようなデザインにしました。

 

屋根のパタパタとした市松が、建物に不連続性を持たせて、周りの戸建ての屋根と連続しており、

また、1つの建物よりも小さな建物が寄り集まった集合体に見えます。

 

 

 

 

□内観-1:駐輪場緩和を使った、容積の最大化。

 

 

駐輪場緩和を用い、1階の全個室に土間の駐輪スペースを付加し、法令上の最大容積を超えた有効床面積をとりました。

 

クールな土間、豊かな駐輪スペースとしてもちろん、居室としても有効活用することが出来ます。

 

 

 

 

□内観-2:1,2階ロフト・整然とした矩形の居室・豊かな天井高

 

 

 

水廻りやシャフトをコンパクトにまとめることで各住戸に大きく整然とした矩形の居室を確保しました。

 

また、天高を高くする必要のない水廻りユニットとロフトを断面的に重ねることで、1・2階ロフトと居室の高い天高を両立させました。

 

コンパクトでも独立洗面台のある水廻りユニット、十分な面積・天高のロフト、高い天井高で綺麗な矩形の居室、これらが図面上の居室面積より解放感・豊かさを感じる暮らしを提供しています。

 

 

 

 

□内観-3:多方向からの採光・採風

 

 

 

建物を平面的にも、断面的にも、上下左右立体的にズラすことで、多方向からの光・風が通り抜けて、住戸毎に特有の抜けや眺望を得ることができます。

 

分棟に見せたい」という外的要求と、

「住戸毎に特有の採光・採風」という内的要求がリンクした瞬間です。

 

 

 

 

 

□内観-4:住戸それぞれの個性の最大化

 

 

周辺の戸建てや商店街、個性的な佇まいの店に応答して、住戸それぞれの異なる個性を最大化できるように一軒一軒作り込みました。

 

 

例えば、

 

 

外構は戸建てのようにそれぞれ固有の玄関としての佇まいにしました。

 

集合住宅でも戸建てのように自分の家として愛着が持てるように。

 

 

 

ロフトにも、住戸それぞれが持つ眺望を活かす工夫を。

普通、ロフトに窓を設ける際、ロフト面積の1/20の大きさの窓しか入れることができません。

それを、ロフト自体を外壁からセットバックする工夫をすることで、

 

・ロフトに大きなピクチャーウィンドウを創ることが出来る。

・ロフトと外壁の間に吹き抜けを創ることが出来る。

以上2点の効果が得られました。

 

都心のアパートなのに新宿高層ビル群のピクチャーウィンドウがある物件です。

 

 

 

その他、

 

屋根形状が部屋へネガティブに現れている箇所に、ライン照明を間接照明として埋め込むことで、ポジティブなデザインに変換しました。

 

 

 

 

以上が、処女作・阿佐ヶ谷アパートメントの概要です。

 

 

記載した大きなデザインの他にも小さなこだわりがたくさん詰まった建築です。

 

 

 

 

 

 

大きなデザインから、小さなこだわり・納まり迄、入居者様に少しでも伝わりますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

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