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【着工】尾山台テラス

category: report
2023.03.17

気温も暖かくなり、春らしい季節になってきした。

3月初旬、「新島の森」(新島学園短期大学の講堂)手塚貴晴、手塚由比設計の特別公開があったので、群馬県高崎市まで行ってきました。手塚夫妻の講演とジャズピアニストRINAさんのコンサートがありました。案内はこちら

Photographer : Tezuka Architects

 

52mの透彫から光が降り注ぐ木造の教会。無数に空いた6mm角の孔から光が回折する様子は、自然の木漏れ日そのものでした。揺れ動き、瞬く光と軽快なピアノの音色が森にいるような錯覚を誘ってきます。内部空間なのに外にいるような感覚で、今までにない体験でした。

ヨーロッパの教会は、石積み構造なので上部に開口があり、神々しい光が降りそそぐ光景が思い浮かびます。
写真:サンピエトロ大聖堂

 

それとは異なる小さい光が集まった空間で、木造の講堂にならではの柔らかな光を取り込んでいました。二重に並ぶ柱は、ゴシック建築の構造を模倣しています。夕景の内部から放たれる光は、線香花火のようで日本を感じる教会でした。Building of the Year Awards 2022年の教会部門で世界一になったそうです。

Photographer : Tezuka Architects

引用:RINA Facebookより

 

尾山台にある東京都市大学(旧武蔵工業大学)は、手塚貴晴氏の出身校であり、教授も勤めており、研究室もあります。また、敷地から徒歩10分ほどに手塚建築研究所もあるのでご近所でばったり会うこともあるかもしれません。

 

さて、本題に入りますが、立地条件はこちら
尾山台図書館収蔵の古地図を入手しました。当時の地形や地名の由来をはじめ、街の骨格がわかります。
昭和14年(1939年)世田谷古地図

 

田園調布は、駅西口から放射線状に広がる道路が見えます。イギリスの田園都市を参考にしたと言われます。九品仏駅(くほんぶつ)は、創建345年の九品仏浄真寺を中心に街が広がっています。南北に伸びているのが、等々力渓谷です。地図の最南端にあるのが多摩川で、等高線が見えます。線が密になっているあたりの台地は、太古から人が暮らしていたところで古墳が発掘されています。北に向かって上がった平地が、尾山台小学校、中学校があるエリアです。当時は、『小山』『尾山村』と表記され、地形から『尾山台』の由来になっています。今回の敷地は、尾山台駅前から南の商店街ハッピーロードがまちの骨格で、古くからある街区にあります。駅から歩きやすく、前面道路のひと通りが多いのも納得できたところで、計画の説明です。

 

さて、『尾山台テラス』は先月から着工しており、基礎工事中です。
木造3階建て、10戸のテラスハウス。18㎡ワンルームから40㎡のテラス付きの部屋までバリエーションがあります。
コンセプトは3つです。
①外壁が3面見える敷地延長
尾山台から徒歩5分の立地。敷地の向かいに尾山台小学校、その北側に尾山台中学校があり、東側道路はスクールゾーンになります。この道路を多摩川に向かって、南側に進むと東京都市大学があるため、大学生の通り道にもなっています。人通りも多く、北側には建物がなく抜けているため、3面見えてきます。
②サイドウィンドをモチーフにしたファサードをデザイン
北側は、環八通りにある『Audi世田谷ショールーム』の駐車場です。アウディの新車が2列に計21台並び、随時入れ替わりきれいに車が整列しています。特徴ある景観にあわせて、車のサイドウィンドガラスの形状のような台形の開口をモチーフにしたデザインを考えました。建物正面テラスを台形の開口、北側斜線の切り出された3階のテラスを台形の開口で連続させたデザインでまとめています。
そして3つ目は、
③ダイアグラム
『家型の切り妻形状』→リビングと外部をつなぐテラス。半屋外空間=テラスにより室内に空気を取り込み、外とつながる開放的な空間。前面道路に向いた矩形の開口から家の個性が表出します。
今回のコロナでリモートワークなど家で過ごす時間が増える中で、テラスなどの屋外空間や窓からの景色の変化が楽しめるような空間の必要性を感じています。テラスをつくるにあたり、外壁を開いたような建築を参考にして、考えて行きました。

 

バロック美術館/伊東豊雄 メキシコプエブラ
閉じられた空間ではなく、自由で動的な空間。紙が折りかさなる形で構成される開いた美術館。
Miu Miu青山店/ヘルツォーク&ド・ムーロン
宝石箱を開こうとした状態を想起させる外観。ステンレスのマットな質感と内部のエンボス加工した銅板が煌びやかです。

© Nacása & Partners

 

『尾山台テラス』の外観は、壁と屋根がひとつに見えるように仕上げられる『ガルボウ』という金属サイディングで統一しています。開いた部分をシルバー塗装で、煌びやかに見せるように考え、カーペイントに近い質感にすると景観とも合ってくると思っています。
新人インテリアコーディネーターと構想中ですが、内部空間も一部、公開していきます。
3階はテラス付きで、トップの天井高3500mmの勾配屋根になっています。テラスの開口部から光を奥へ導くように、欄間をFIXガラスとして、ひとつながりのワンルームとなっています。
リビング全体を自然光で明るくできるように、天井はシルバーの仕上げを選定中です。浴室、脱衣室も開口があり、水廻りも明るい空間になります。テラスの手すりに引っ掛けるプランターも検討中です。主寝室は、調光をつけて落ち着いた雰囲気のしつらえにしていきます。

テラスをきっかけに生活がにじみ出し、まちとつながるような建築にできると良いなと思っています。

弊社、営業の初仕入れプロジェクトということもあり、熱量高めで長くなってしまいましたが、どうかご期待ください。

 

ミッキー