(プロジェクト詳細はこちら→【着工/上棟】京都での初新築 ”京都の邸宅” 工事中)
今年の京都の夏、正直かなりえげつなかったです。
7月下旬には連日40℃に迫る「危険な暑さ」が報じられ、気づけば猛暑日が30日を超えて記録的なペースに。
鴨川では今年2回目となる猛暑日10日連続を記録し、涼を求めて高野川に足をつける人の姿がニュースになるほどでした(参照:京都新聞)。
盆地特有の熱のこもり方は、観光で訪れるだけでは分からない京都の一面だと思います。

そんな酷暑の中でふと思ったのが、「じゃあ昔の京都人はどうやって涼をとっていたのか」ということ。
打ち水、簾、坪庭を抜ける風、深い軒、土壁のひんやりとした質感……。冷房のない時代、京都の町家は建築そのもので暑さをいなす工夫に満ちていました。
前回の記事で、京都の魅力は「圧倒的な実体感」にあると書きました。
古いお寺の書院に座って感じる畳の質感、古木の匂い、床の冷たさ、ざらりとした土壁の表情。数百年分の雨風に耐えた木の節。スマホ画面のツルツルとは真逆の、圧倒的なデコボコ。
あれから約半年。あの敷地に建っていた足場が外れ、ついに”京都の邸宅”が竣工しました。
今回はその竣工報告ブログです。
そもそもこの計画、SAP史上初の京都”新築”プロジェクトでした。
敷地は京都らしく”ウナギの寝床”。間口は狭く奥行きがあり、隣地はびちびちに建て込む。背面にはお寺があり、視界が抜ければ寺viewが楽しめる、そんな土地でした。
(このあたりの敷地の話は前回記事でも触れたので、気になる方はぜひ遡ってご覧ください。)
さて、「京都らしさを現代的に再解釈する」というコンセプトのもと進めてきた設計。
竣工した建物を、外観・内観それぞれ紹介していきます。
□外観
― ダイアグラム ―
京都の景観条例下では、意匠として木製ルーバー以外のファサードが実質考えづらい、という話は以前別の記事(GRAND VALUE 七条の記事)でも書きました。
京町家が「うなぎの寝床」ゆえに採光・採風のために道路側へ大きく開き、かつプライバシーと防犯を両立させるために格子が発達した、あの流れです。
今回はその”格子・ルーバー”というキーワードを、金属パネルで再解釈しました。


― 外装 ―
外壁にはリン酸処理を模した金属パネルを採用。京都らしいルーバーを、スタイリッシュな縦のラインへと変換しています。
1階には黒石の洗い出し仕上げの駐車場、そしてスイスの鉱石の模様を模した高級感のあるタイルを敷いたアプローチを設けました。

玄関まわりは天然木のリブパネルで、ホテルを意識した重厚感のある塗装を施しています。

裏鬼門(南西)には厄除けの角石を、アプローチにはいろはもみじを一本。常緑ではありませんが、春の新緑、夏の青葉、秋の紅葉、冬の枝姿と、四季の移ろいを一年通じて感じられる木です。京都らしさは、こういう小さな作法の積み重ねだと思っています。

― 玄関―
框には天然石(ジンバブエ石 水磨)を使用。土間からホールへと続く動線は、木パネルの壁と床貼りの向きにまでこだわりました。
アイストップとなる正面には、外観と呼応する縦方向のリブパネルを設え、ホテルのようなエントランス空間としています。

― 暑さ対策 ―
冒頭の猛暑の話に戻ります。設計段階から「この暑さは今年だけの話じゃない」という前提で、いくつか対策を仕込みました。
まず窓は全て複層ガラスサッシを採用し、外皮の断熱・遮熱性能を確保。長期優良住宅の認定基準にも省エネルギー性の項目があり、そこもしっかりクリアしています。
外壁の金属パネルは日射を受け流すルーバー状の意匠としつつ、開口部には電動シャッターを設けたので、西日が強い時間帯もリモコン一つで日射を遮ることができます。

軒・庇も浅くしすぎず、屋根から張り出させることで、夏の高い日射角の光を遮りながら冬の低い光は取り込む、昔ながらの京町家の理屈を踏襲しました。
3階の縦滑り出し窓は通風を意識した配置で、風の抜け道をつくっています。土壁の代わりに用いた木パネルや天然木も、調湿・蓄熱の面である程度の効果が期待できる素材です。
エアコンに頼り切らない、というと大げさですが、建築でできる範囲の「涼のとり方」は、できる限り仕込んだつもりです。
― 照明計画 ―
φ75という小径のダウンライトをベースとして照明計画を行いました。
寝室等は「グレアレスダウンライト」とすることでまぶしさや過度な照度を軽減し、高級感を演出しています。
玄関ホール・LDKでは素材を活かした間接照明を基本として明るさを確保しています。
高性能インターホンはスマートフォン連携で、外出先からでも来客対応が可能。
宅配ボックスは2口内蔵で、玄関まわりは電動シャッターによってリモコンひとつで開閉できます。細かな設備ですが、こういうところの快適さが日々の暮らしを地味に、でも確実に支えてくれます。
□内観
― 1F 悠々自宅 ―
1階には、水回りを独立させた10.41帖の洋室「悠々自宅」を設けました。
シャワールーム・洗面を備え、玄関まわりも施錠可能。二世帯利用、ゲストルーム、賃貸運用と、暮らし方の変化に合わせてフレキシブルに使える部屋です。

中目黒の邸宅でも、住戸の個性や柔軟な使い方にはこだわってきましたが、京都の邸宅でもその思想は継承されています。
トイレはPanasonicの「アラウーノ」タンクレスタイプ。バブル洗浄・トリプル汚れガード・スゴピカ素材・スキマレス設計と、清潔機能はフル装備です。
― 2F 主寝室・WIC ―
2階は主寝室(9帖)とWIC、もう一室の洋室(7.2帖)で構成したプライベートフロア。
床は”幅300㎜のオークフローリング”とし、通常より広い幅を採用することで、おおらかな空間になるようにしました。

洗面台はPanasonic最上位クラス「L-CLASS」。人造大理石カウンターをワンボウルにすることで、化粧スペースをしっかり確保しています。
浴室も同じくPanasonicのユニットバスで、京都らしく木調の内装にまとめました。

ガス衣類乾燥機「幹太くん」の設置にも対応しており、水回りまわりの利便性も抜かりありません。
階段は踏板・蹴込板でクロスと木を切り分けるデザインとし、階段室はダイノックシートによる木模様。上りながら素材の切り替わりを楽しめる、小さな仕掛けです。

― 3F LDK ―
最上階には22.17帖のLDK。吹き抜けを通じて、空気と光が明るく縦に抜けていく、この住まいの主役となる空間です。

壁・天井は木突板パネルで、天然木に包まれたリビングに。間接照明部分には効果的にダイノックシートを使い、調光調色(昼光色↔電球色)で時間帯や気分に合わせて表情を変えられるようにしています。
キッチンもPanasonic最上位クラス「L-CLASS」。人造大理石カウンターにフロントオープン食洗機(幅600㎜)を備えました。

ダイニングを照らすのは、伊東豊雄デザインのペンダントライト「MAYUHANA」。
繊細な光の繭のような佇まいで、食卓の空気をふっと柔らかくしてくれます。

LDKには床暖房エリアも確保。冬でも足元から暖かく過ごせます。
― ホームエレベーター ―
3階建てという構成を支えるのが、1階から3階まで直通するホームエレベーター。
エレベーター周りは黒の縦格子で仕上げ、外観のルーバーと呼応するデザインとしました。荷物の上げ下ろしはもちろん、将来的な暮らしの変化にも寄り添う設備です。

以上が”京都の邸宅”の全容です。
前回記事で「京都らしさをアップデートした実体験」が得られる戸建になるはず、と書きましたが、竣工してみて改めて、格子・木・土壁といった京都的な要素を、金属パネルやダイノックシート、間接照明といった現代の技術で再構成できたのではないかと感じています。
そして冒頭の猛暑の話。複層ガラスや庇、電動シャッターといった対策は、地味ですが今年のような夏を経験すると、じわじわと効いてくるはずです。
見た目のデザインだけでなく、この土地に長く住むための「涼のとり方」までアップデートできました。
なお本物件は、耐震性・省エネルギー性・劣化対策・維持管理の容易性など国の厳しい基準をクリアした「長期優良住宅」の認定も取得しています。
築年数だけで価値が決まらない、長く付き合える住まいです。
立地は京阪本線「清水五条」駅徒歩5分、京都市営地下鉄烏丸線「五条」駅徒歩6分。東本願寺までは歩いて約10分、清水寺や高台寺、祇園にも徒歩圏。四条・烏丸エリアの利便性と、古都の情緒が同時に手に入る場所です。
SAPでは今後もプロジェクトが続いていきます。京都担当としては、次はどんな”実体感”を再解釈できるか、今から楽しみです。
NavY

物件概要 所在地:京都府京都市下京区富小路通り五条下る本塩竈町555 交通:京阪本線「清水五条」駅徒歩5分/京都市営地下鉄烏丸線「五条」駅徒歩6分/JR「京都」駅徒歩15分 土地面積:87.73㎡(26.54坪)|延床面積:168.94㎡(51.10坪)|専有面積:140.23㎡(42.41坪) 構造:木造3階建て|間取り:3LDK+2WIC|土地権利:所有権|取引形態:売主 事業主:シマダアセットパートナーズ株式会社(宅地建物取引業/東京都知事(4)第88918号)

