こんにちは!
新型コロナウィルスが世界中で猛威を奮っております。SNSの浸透もあって真偽の情報が錯綜しがちですが、正しいことを見抜く力を養わねばと思う今日この頃です。
国交省主催の会議、題して「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に関する懇談会」を傍聴して来ましたのでご報告します。
「サ高住(サ付きとも言います)」の定義としては、国土交通省・厚生労働省が所管する「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法:2011年改正)」に基づいて創設された「高齢の単身・夫婦世帯」が安心して居住できる賃貸等の住宅の総称で、大きくは「自立型」と「介護型」に分かれます。(サービスとは「安否確認サービス」「生活相談サービス」のことを指します)
希少な自立型サ高住の一つであるシマダグループの「グランジュール尾山台」についてのブログを書いたとき、人生100年時代に突如現れたように見える世代ボリュームをどう定義しどう扱うべきなのか、国や自治体でもまだ確たる道筋は構築できていないと感じました。あれから少し経ちましたので、新しい情報や施策方針などあるのでは?と期待しつつ、厳重にマスクをして東京国際フォーラムの会議室に出かけて来ました。
SAPブログ担当のI氏から、「ブログは手短に。内容もマニアック過ぎるものは避けるように!」と厳命されましたので、今回はできるだけ簡潔にまとめてみたいと思います。
東京国際フォーラムに到着しました。余談ですが(いきなり雲行きが怪しい)、私にとって東京で3本の指に入る「時々行きたくなる」建築です。
建築学科を卒業して上京した私に「東京はスゲーな」と最初に思わせたのが東京国際フォーラムでした。当時はこじらせた建築青年でしたので、表向きには「こんなバブル建築(by磯崎新)が」というフリをしていたのですが、何度も訪れて時を過ごしたり内容・技術を読み聞きしたりするうちに、これはやはり尋常ではない建築だと思うに至りました。
例えば建築ボリュームの配置と動線の取り方の巧みさやコントロールされた騒音・賑やかさの演出も見事ですし、とにかく大きな空間をデザイン純度高く仕上げてあります。各国要人やアーティストも数多く訪れる「都市の初期印象」を形成する空間づくりを、という試みとしては成功しているのではないでしょうか。(意味合いとしては研修旅行で行ったエルミタージュ美術館の「大使の間」を連想します)
いわゆる「映え」ポイントになっているのでしょう、インバウンドの観光客が列になって写真を撮っていましたので早速マネしてみたのがこれ。
ガラスの手摺の上にカメラを乗せて反射させるのがポイントのようです。なるほどね~(あまりうまく行かなかった)。
写真を撮っていて建築的に特に素晴らしい感じるのがデザイン指向とエンジニアリングの融合です。2本の柱だけで大ガラスアトリウム全体を支えたいという執念(もちろん掛けられるコストも)がなければ実現しなかったのは間違いありません。並みの建築家や構造家だと、ガラスの壁面に沿ってズラリと列柱を立てて「柱を細くした」ことに満足していたでしょう。
大規模建築にありがちなディテールレス(いわゆる大味)なところもなく、隅々まで神経が行き届いているように感じます。見える箇所はボルトやリベットでなく溶接合が主体なので、要素の多さのわりには見た目のノイズ感が少なく美麗です。溶接関連だけでいくつも論文が書けるような内容が盛り込まれています。くどいですがコストもボルト接合と比べると相当高くついているはずです。
くどいついでに総工費を見てみると1,650億円(当時)。くだんの新国立競技場が1,560億円だそうですから消費者物価指数を考慮するとあまり変わらないかもしれませんが、やはり高いなあといったところでしょうか。ただ国際フォーラムが民間経営になってからずっと黒字運営とのことですので、それはこの手の施設としては立派ですね(上から目線)。新国立競技場は。。。運営に関しては結構厳しいことも言われておりますが大丈夫なのでしょうか。都民としては不安を覚え…
また(もう?)暴走しそうになりました。
ロシア研修旅行のブログでご紹介した、日本ではあまり知られていない建物と違い、検索するとすぐに色々興味深い話が出てきます(「SDG、構造設計」あたりで検索すると、いくつか映画化できそうな話が。。。)し、本題と全く関係ないのでこの辺にしようと思います。
さて主催が国土交通省住宅局、全国の有識者委員、オブザーバーとして厚労省・東京都・品川区の各担当者も参加するこの懇談会、今回が3回目となります。2時間という限られた枠の中で、官・民の収集した膨大なデータの紹介と分析が駆け足で紹介されたので、内容を追いかけるだけでも大変です。その後20名以上いる錚々たる委員が各自1回だけ発言して時間終了、という感じで、そこは少し残念でした。半日や一日かけてよいと思うのですが、それだけ各人の凝縮された思いが聞けたという側面もありそうです。
① 高齢者の住まいの現状と需給の見直し
② サービス付き高齢者向け住宅の現状等
③ 高齢者の居住実態調査について
④ 高齢期の居住の場の選択の流れ
データから今後の予測をすると、住宅の供給不足予測等、決して楽観的なものではありません。
過去どの国も経験していない(つまり参考になる事例がない)超高齢化社会の住環境整備をどうすればいい?何とかしないとマズイぞ、と産・学・官・民ともに危機感を持って考えていることは強く印象に残りました。楽観はできませんが、日本全体が思想を超えてワンチームで議論できるテーマであることはひとつの希望かもしれません。
データ・資料は国交省のHPにアップされていますのでリンクのみで。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr7_000034.html
各委員の発言も踏まえて印象に残ったものをピックアップしてみます(一部脳内補完していることをお断りします)。
・普通の人は高齢期の住み替えor自宅改修(バリアフリー化等)をどうすればいいのか判断するのが難しい。住宅供給事業者に任せるのではなく、国や自治体もモデルを示していく必要がある。
・データ上60~65歳、つまり定年退職時の頃に住み替えるか自宅改修するかを決断する比率が非常に大きい。その時期を過ぎると次はそれから15年経過した頃に再度小さなピークが来るが、そこまでの期間は空白期間となってしまっている(いわゆる「判断の先送り」問題)。そこに至ってしまうと、身体的にも大きな変化を受け入れ難くなる等の問題が発生するので、本来は最初のピークの頃に(早めに)どうすべきか判断した方がよい。
・このように、適切なタイミングで判断できないことが、都心の空き家問題にも繋がっている。これらの不動産をどう扱うか、大きな問題。(注:最近報じられましたが世田谷区の空き屋数が全国一位で、約49,000戸あるようです。http://www.ichounokai.jp/index.html/2001.akiya..pdf )
・サ高住は「住宅」でなく「施設」だと思われていた節がある。この(一般的な)誤解で広まる速度が速まった可能性もある。今後も普及速度はさらに増す予測。
・高齢者の住宅に関する情報が不足している。一般の人達はどこに行って聞けばよいかわからない。仮に相談したいことがあっても、役所に行くと住宅課でなく高齢福祉課に案内されてしまう(ので、実際に必要な情報とは少しズレが生じる)。
・サ高住の個性化が進んでいる。廃校になった学校を住宅化する等、幅広い取り組みが入居希望者の選択肢となり、魅力向上につながる。グッドデザイン賞を取るような物件が増えて行って欲しい。
・住み替えにあたっては当人だけでなく、その子供のことも考えなければならない時代。引きこもり問題も大きくなっている(この場合受け皿がない)のと、子供が自分の親を住まわせたいと思うような住宅をいかに造るか。
・品川区では、現状自立できている人にも敢えて「おせっかい」で住環境の案内をするような試みを行っている。
・サービス・施設事業者側の供給能力についても今後調査・議論していく必要がある。
委員の方々の危機感は共有できているように思いました。事業者として、これからどのような施設づくりや取り組みをしていくべきか、主体となって考えていくことが求められているように感じます。
議論を聞きながら、「グランジュール尾山台」や「葉山うみのホテル&介護」、シマダグループの次なるプロジェクトについても思いを馳せていました。
グランジュール尾山台で言うと、例えば高齢者の多様化するライフスタイルの受け皿になれるような施設・運営メニューづくりや、段階的な住み替え(ガーデンテラス尾山台との連携等)ビジョンを示しているという点で、手前味噌ですが先駆的な取組みを行っているように思います。
今後は住み替え・自宅改修の判断が「先送り」にならないような分かりやすい情報発信を心がけ、施設自体もますますブラッシュアップして、高齢者居住環境の未来を明るく照らす企業になるよう取り組んで行かねばと社員一同考えております。是非ご期待下さい。
P.S.
グランジュール尾山台、既に複数の入居お申し込みをいただいているようです。ご相談はお気軽に。
シマダグループの介護事業にご興味がある方はこちら↓↓↓
シマダリビングパートナーズ株式会社
http://www.hibari-kaigo.jp/
g.o.A.T.