2019年1月、私たちの11番目の高齢者施設となる「ガーデンテラス仙川」がオープンしました。
私たちはこの土地に高齢者施設を計画するに際して、建物を作るのではなくて、森を作りたいと考えました。
遠いむかしこの土地は三鷹の森でした。
その森を再生し、この土地にかつての景観を再生したいと考えました。
森として構想された施設は大きな森を取り巻くように配置され、各部屋のバルコニーの先端は緑化され建物自体が森を構成しています。
この施設では森のなかにひっそりと暮らすような生活をイメージしています。
森のような中庭を通り過ぎて、あえて高さを低くおさえられたひさしから建物のなかに入ると目の前に2層分吹き抜けた大きなエントランスホールが広がります。
眼前にはさっきとはまた違った森が広がっています。
それは森のなかに突然あらわれた大きな空間をイメージしています。
巨大な壁面は自然の土で作られています。
森のなかの岩山のような質感をイメージしています。
吹き抜け空間は緑や土、光といった自然によって満たされています。
食堂は森を眺める空間であり、同時にそれ自体が森でもあります。
壁一面がガラスでおおわれそこから中庭の森を眺めることができます。
それは季節の移り変わりを内部空間に取り込む装置でもあります。
ラウンジはあえて天井高を少しおさえ、ゆったりと落ち着いてくつろいで過ごすためのスペースです。
おうちの中のリビングルームのようにしつらえられています。
ここからも中庭の森を一望することができ、遠くの街並みまで見通すことのできる空間です。
居室は、どの部屋からもみどりを眺めることができます。
中庭に面した部屋ではバルコニーの先端にしつらえられたみどりの向こうに森が一望できます。
部屋はホテルの一室のように仕上げられています。
間接照明が空間をやさしく照らしてくれています。
また、この施設は保育園を併設しています。
ここでも内装は森をイメージして、大きな樹木が空をおおっているような空間としました。
ここで過ごすこどもたちの成長を見守る母なる木のような空間になればいいと思って計画しました。
わたしたちはグランエッグスのような長屋や集合住宅を計画しています。
いっぽうで、昨年オープンした「bar hotel 箱根香山」のようなホテルも設計しています。
今回のような高齢者施設の計画においてもつねに長屋や集合住宅のような「くらし」の設計のノウハウがいかされています。また、ホテルのような非日常的な空間での「あそび」の設計のスキルもいかされています。
長屋や集合住宅、ホテルや高齢者施設といった異種用途の計画のノウハウがさまざまな施設の設計にいかされています。そうすることでわたしたちにしかできない他にはない施設を作り上げることができるのです。
「ガーデンテラス仙川」がひとでにぎわい、施設とともに森が成長していくのを心待ちにしています。
青山 玲