京都駅です。
日本の文化観光都市「京都」の玄関口として、国際指名コンペで建築家:原広司が設計した駅舎です。
内部には,駅,ホテル,商業施設,文化施設,広場などを備え、駅舎としては国内最大規模のターミナルビルとなっており、
中央ガラス張りのコンコースと、その横に伸びる段数171段に及ぶ大階段が特徴的な建築です。
6年間京都に住んだのちにこの駅舎を見ると、
「京都の街みたいだなぁ」
と、小学生にも言えそうな感想が。。
でもちゃんとこんな稚拙な感想にも理由があります。
構造体も、中央コンコースのガラスファサードも正方形に近く、碁盤の目のようである。
これは平安京の都市の特徴である「碁盤の目」を随所に取り入れた構成になっているのではないか。
時折現れる凸凹した外壁やユニークな形状のオブジェは市内の寺社仏閣を表現しているのではないか。
確かに市内を歩いていると、矩形の都市形態・建築の中に頻繁に「曲線美」の寺社仏閣が現れます。
原広司はそんなことを意図しながら設計をしたのだろうか。。(いや、そうに違いない)
そんな私は、京都担当の設計士として京都の物件を担当しています。
以下の物件の外構のバリューアップを行いました。
螺旋階段を覆う大きなパンチングメタルの筒が特徴の建築です。
当時の改善すべき問題点として、
・筒の下部が自転車等の衝突で凸凹であること。
・自転車が煩雑に停められていること。
・カオスな広告や照明。
が大きく挙げられます。
1つの大きな操作として、
バリューアップ虎の巻の通り、「不要物の撤去」、「見せたくないものを隠す」、「物を整理する」等を行いました。
不要物の撤去によって生まれた空間を駐輪場に転用し、室外機を隠し、広告を整理し、店舗と住居を区別するべく彩色をしました。
2つ目の大きな操作として、
パンチングメタルの下部を撤去し、新たにルーバーを設置しました。
そう、「ルーバー」です。
京都のマクロなデザインを「碁盤の目」とするなら、ミクロなデザインは「ルーバー」で構成されています。
京都の本当に多くの建築にルーバーが設置されています。
理由としてはいろいろ考えられますが、
そもそも、景観条例で意匠的に木製ルーバー以外のファサードが考えづらいことが主に挙げられます。
そもそものそもそも、景観条例でなぜルーバーを推奨するのか。
京都の町家は「うなぎの寝床」と呼べれるように間口が狭く、細長く、採光や採風の確保のために道路に対して大きく開く必要性があり、
プライバシーの確保と防犯面と両立するために格子のデザインが京町家で流行ったという背景があります。
そのため、周囲との調和を図る景観条例がルーバーを推奨するわけです。
今では、「京都のデザインとは?」という問いに対して、
ほとんどの人間が「ルーバー」と答えるでしょう。
長々と書きましたが、故に今回も「ルーバー」によるバリューアップです。
偏にルーバーといっても、今回は所謂「洛中」からは離れ、形態がそもそも円形です。
京都の景観条例も緩い場所なため、「ルーバー 2.0」を試みました。
円形の階段吹抜をふちどるように短冊状の鉄の薄板を2層に並べ、個々の短冊の回転角が連続的に変化する配置。
層ごとに回転の位相や周期に微妙に変化をつけることで、ルーバー自体が光の反射の向きや部分ごとの光量を調整する光学装置となると同時に、曲率変化による動的な視覚効果を楽しむ装置となるように計画。
歩行者の視点移動の速度や経路に応じて、多様な角度のルーバーによって生じる干渉縞の揺らぎや、乱反射される自然光の分布は、天候や時間、観察者をパラメーターとしながら常に異なる表情を見せるように。
と、つらつらと高度なことを考えていたのでですが、、現実は厳しく。
バリューアップという「螺旋階段の径が固定」という現実に理想は打ち砕かれました。
径の小ささ故に光学装置としての役割はなせませんでした。
曲率による視覚効果は得られ、ゆらぎを与えてくれます。
今後の課題です。
色んなことを思考(試行)してみた初めてのバリューアップ物件@京都
京都に行った際は是非「ルーバー 2.0」でゆらぎを感じに行ってみてください。
Navy